新型コロナウイルスが世界中を大混乱に陥れ、井上尚弥の試合も延期されることになった。不謹慎と承知しつつも、トップボクサーが試合から遠ざかる不安をぬぐえず、またモンスターファイトを視聴する――
下里 淳一 Junichi Shimozato
モンスターがモンスターでなくなる!?
井上尚弥の試合が延期になった。 新型コロナウイルスという、たぶん人工のウイルスの蔓延で、未曽有の事態がくるかもしれない。ボクシングどころじゃない。仕事がなくなる、食い物がなくなる、明日がなくなる、だろか。
だけど試合がないのは残念だ、いつ試合ができるのかも気がかりだ。
不謹慎は承知だ。社会が破滅へ向かう心配よりも、試合から遠ざかることで、モンスターがモンスターでなくなるかもしれない心配のほうが、僕は大きい。 懐かしさとか思い出とか、そんなセンチな気分で見たくはないが、モンスターファイトをここしばらくまた見るようになった。 先のノニト・ドネア戦は世評高く、すでに語りぐさだ。その前のエマヌエル・ロドリゲス戦も、緊迫の好ファイトだった。
2014年12月の、オマール・ナルバエスを2Rで倒した試合は、ファイティング原田がエデル・ジョフレに勝った試合と同レベルの値打ちだと思った。
日本ボクシング史上最高試合
僕のいちばんのお気に入りは、2018年10月のファン・カルロス・パヤノ戦。 言葉がない。ハートやマインドをめちゃくちゃ刺激してくれた。こんな選手に、こんな試合に出会えるなんて思いもしなかった。 日本ボクシング史上最高の試合、僕の中だけだけどね。
昨年刊行された『勝ちスイッチ』(井上尚弥著/秀和システム)の43~44ページは、ベストセラー小説を凌ぐ。それほど読書はしないんだけどね。 花は咲いても愛でる間もなく、嵐に散ってしまうのか。咲き誇れ。
2020.04.03
Photo : H.Inoue
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