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Monster 2024-2025

バンタム級に続いてスーパーバンタム級でも主要4団体の王座を統一、5月に東京ドームでルイス・ネリを倒し、9月にはT.J.ドヘニーも難なく退けた井上尚弥。12月24日、サム・グッドマンを相手に2017年以来の年間3戦目を行う"Monster"について、久々にいろいろ――


井上 博雅

Hiromasa Inoue


Monster 2024

 あっという間に11月も下旬に差しかかった2024年――


 12月24日に、東京・有明アリーナでサム・グッドマン(オーストラリア)との統一王座防衛戦を控える“Monster”井上尚弥(大橋)。2017年以来となる年間3試合目だ。


 勝敗や試合展開について、幸か不幸か波乱の予感を抱くことはないカード。はたしてどんな一戦になるのか。


 前回、9月3日のTJドヘニー(アイルランド)戦は“腰にくる”パンチでの、あまり見ないフシギなTKOシーン。予想・想像ができなかったという意味ではサプライズ感のある結末だったけれど、それでも、ルイス・ネリ(メキシコ)戦におけるファーストラウンドほどのビックリ感には及ばない。


#InoueNery , Tokyo Dome

 5月6日、東京ドーム。6回1分22秒TKOに仕留めたそのネリ戦を振り返ると――


 結果については、ドヘニー戦同様予想通り。顔面を跳ね上げた右のフィニッシュブローの痛烈さも記憶に残るが、やはり、モンスターが見舞われた初回の“ビッグトラブル”は、結果以上に印象深く、語り継がれるシーンだったといえるだろう。


 遠い最後列席からでもわからないはずはなかったのに、起こったことを信じたくなかったというか、「井上尚弥がダウンを喫した!」現実に、恥ずかしながらすぐには目とアタマが追いつかなかった。


 そしてダウンしたのは井上だと思い知らされた瞬間、なんとなく頭に浮かんだのは、なぜか、なぜかザブ・ジュダーがコンスタンチン・チューに倒されたシーン。平静を装い大丈夫アピールをしてはいるけど、ヨレヨレカクカクで、すぐまたキャンバスに転がったジュダーを見たレフェリーのジェイ・ネイディが試合を止めた一戦のように、両手を交差させてしまうんじゃないか…


 しかしモンスターはあわてて立ち上がろうとせず冷静。ジュダーのように頭を打ってしまってなかったことも幸いし、すぐにストップされそうなほどは効いてなさそうだ――とわかるのはもう少し後。試合は再開されたものの、当然効いている、ネリも決めにかかってくるだろう。なんて展開になってしまったんだ、としか思えずにいた。


 勝負ごとに絶対はないし、試合に臨んでる以上そういうピンチに陥ることだってある、ともわかっちゃいたけど、よりによってネリに? しかも初回で!? いくら何でもちょっと悪ふざけがすぎないか? というボクシングの神様へのボヤきワードやネガティブなことばかりが、わずかな時間に頭の中を駆け巡っていたことを思い出す。


 追撃を許さず、2回にはすぐダウンを奪い返し、その後もモンスターのペースで展開。5回に左フックで再び倒し、つづく6回にきっちり仕留め、ドームのどよめきを大歓声に戻したときの安堵感も忘れられない。



 手に“冷や汗”を握るような初回以外は怪物が悪童を支配した試合が終わり、落ち着いたあとに思い浮かんできたのは、アメリカなどで「BET」していた人たちの一喜一憂ぶり。


 日本人ファンの大半が凍りついた初回のダウンシーンを見て、ネリに賭けていた人は狂喜したことだろう。《ネリ勝利》でも高オッズ。それが《ネリKO勝利》、さらにはもっと高配当であろう《ネリ1回KO勝利》も、ほんのひと時とはいえ現実味を帯びたのだ。張っていた人は、我々とは真反対の意味で心臓が止まりそうになっただろう――と。


 でも怪物はそんな「大穴」が出るようなスキまで見せることはなかった…


vs. Next Monster―― 2025 !?

 様々な人の記憶に残るファイトを見せてくれているモンスター。グッドマン戦後の2025年春は5年ぶりにラスベガスで、というプランに加え、サウジアラビアの政府直轄プロジェクトとの30億円契約締結など、トップファイターらしいニュースも報じられた。


『Boxing News』2023年8月3号

 昨年から、ウェルター級で同時期に4団体統一を果たしたテレンス・クロフォードと、より強いのはどっち? PFP(パウンド・フォー・パウンド)ランキングのトップは、井上? クロフォード? それとも、オレクサンドル・ウシク? サウル・カネロ・アルバレス? ・・・・


 そんな、不毛とわかっちゃいるけど想像や妄想をすることが楽しい議論が話題に上る機会が増えていることもまたうれしい。


 様々な意見批評があっていいし、「1位はイノウエではない」と考える人がいても、おかしいだろと感じることはない。こういう話題で日本のボクサーがピックアップされ、比較や評価の対象になることさえ今までなかったのだ。


 もっとアメリカでも試合をすべしといったネガティブ系のコメントを発するボクサーやジャーナリストもいたり、いずれ上げるであろうフェザー級で、現在トップ戦線で闘っているタイトルホルダーから“ラブコール”を寄せられたり、《Naoya Inoue》の注目度の高さは相変わらず。


 そこへ、「PFPの1位になりたい若者」――1階級下のバンタム級タイトルを獲得して3階級制覇を成し遂げ、猛追する《Next Monster》中谷潤人が、PFPのトップ10圏内に駆け上がってきた。遠からずスーパーバンタム級に上げ(その前にバンタム級統一?)、井上尚弥とのドリームマッチへ! という空気にもなっている。


 MONSTER vs. Next MONSTER 、井上尚弥 vs. 中谷潤人―――


 実現するとしたらまた東京ドームクラスのデカいハコで挙行されること必至、ドキドキワクワク感もネリ戦をはるかに凌ぐメガファイトとなろう。早ければ2025年の年末? 来年の今頃はこの話題で持ちきりになっている……?


 日本人ボクサーが世界的にトップクラスの高評価を得ることさえこれまでほとんどなかったのに、その選手を破るかもしれないと思わせるツワモノもまた日本から出現し、対戦機運の高まりを海外メディアも報じるような日が来るなんて…今までできなかった想像ができるようになっていることに浮かれている師走直前。


 何はともあれ、まずは残り1カ月を切ったグッドマン戦。グッドな内容と結果になることを祈るばかりだ。

2024.11.26

Top Rank Boxing

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