端的にいえば慎重さと経験値の差、だったのか。いろいろあった2020年を締めくくる一戦は、田中恒成の速いパンチを見極め、カウンターを炸裂させた井岡一翔の見事な勝利に終わった。
井上 博雅
Hiromasa Inoue
8ラウンド1分35秒
2度のダウンと、8回にレフェリーがストップするきっかけになったのは、みんな同じようなタイミングで放たれている左パンチだった。
2020年大みそかに行われたWBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ。
地力に勝ったというのか、底力や経験の差も出たというべきなのか。冷静さを失うこともなかったチャンピオン井岡一翔が、若く、真っすぐすぎたチャレンジャー田中恒成の闘いぶりを打ち砕いた、そんな一戦だったか。
試合後、思ったままを言ったのか、田中は正直に「完敗です」と認めたようだ。ただ「こんなに差があったのかとびっくりしました」とつづけたらしいそのコメントについては、言わなくてもよかったんじゃないのかな? と思ったのが自分の感想。
あえてそういう言い方をしたのか…ほんとにそう思って言ったのだとしたら、今後を考えると発しなくてもいい一言だったという気がする。
なんとなく田中優位と予想していたせいもあるが、井岡にもそれほど余裕があったようには見えなかっただけに、"かないませんでした"みたいに聞こえる言葉は残さなくてもよかったろう――と思ってる人は少ないか。
2021.01.03
Photo : H.Inoue
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