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続・バリアフリーについて…考える

  • 執筆者の写真: H. Inoue
    H. Inoue
  • 2021年6月9日
  • 読了時間: 4分

"騒ぎ"はおさまりつつあるかと思ったら、まだだった。週刊誌でも記事になった。相互理解、歩み寄りはやはり困難なことなのだろうか――

うらごろー

Uragoro


 △

再炎上?

 炎上状態はおさまりつつあるかと思っていたら、当の伊是名さんが再びいくつかツイートしたことで、またちょっと燃え始めちゃった感のある"来宮問題"に端を発した一件。


 さらに、この「乗車拒否」問題が5月31日発売の『AERA』6月7日号で「わきまえてたら 乗れなくなる」のタイトルで記事にもなって――

※誌面と、タイトルや見出しが違うけど"AERA dot."にもアップ
 ↓
https://dot.asahi.com/aera/2021060400002.html?page=1 

 また"燃料"が投下された状態になってしまっているか。


 記事のはじめのほうで「障害のある人が、ない人と同じように駅を利用したいと声を上げただけで、『わがまま』と非難される現実が露呈した」と書かれているが、非難されたのは声を上げたことに対してではなく、顛末を撮影してブログにアップしツイッターで拡散を呼びかけメディアにも通報した、方法と声の上げ方の粗暴さについてだろう…


 非難が発展し、誹謗中傷も多々。それはもちろんよくないけど(たしかに伊是名さんや支持する人へのひどい書き込みも多々あったけど)、支持しない考え方そのものまで誹謗中傷ととらえるような誤解曲解を多く見受けるのは、残念なところだ。


※写真はイメージ

 前回も記した通り、自分も、伊是名さんがとった行動や声の上げ方がNGだと思っていることに変わりはない。


 一方で――


 エレベータのない無人駅への乗降案内の依頼が突然だろうとなんだろうと、対応に必要な数の駅員がその場にいなければ周辺の駅からかき集めて、一刻も早く車椅子の持ち運びをする。これこそが合理的配慮と努力義務を果たしているといえることで、それがきる駅施設の整備や人員配置ができないのだとしたら、それはあんたたち鉄道会社に問題があるってだけ。弱者であるこっちが不便な目に遭うなんて差別――という、伊是名さんや支持する人たちの考えにも、変わりがないみたい。


 繰り返すと、事前に連絡なんかしなくたってどの駅も利用できるのがモアベターなのはもちろん理解できる。でもできない時と場合(と場所)があり、できる場合でも他駅からの招集が必要で、事前連絡なしでは対応困難、かつ電動車椅子の階段での持ち運びは、負担も大きいイレギュラーな仕事なんです、と理解を求めるのはムリ…ということのようだ。


日本一のモグラ駅だったら…

 もしも今回の一件がここで「計画」されていたら、と想像した場所がある。


JR土合駅

 群馬県北部、新潟との県境にも近い、JR上越線の土合(どあい)駅。


 温泉の街でも知られる、水上(みなかみ)から新潟方面へ向かって2つ目、かつては谷川岳の玄関口として多くの登山者でにぎわった、今は無人駅になっているところだ。


 この駅、水上~高崎方面への上り線ホームは地上(右写真の駅舎の向こう)にある。しかし、行ったことや聞いたことがないと、なかなか想像できないかもしれないけど――


 越後湯沢~新潟方面への下り線ホームは地下…というより地底、高低差約70メートルの新清水トンネル内で、合計486段の階段を下りたところにある。理由や事情はいろいろな、とても変わった複線。《日本一のモグラ駅》ともいわれていて、エレベータもエスカレータももちろんなく、階段のみだ。


 改札からホームまで、あるいはホームから改札までは、案内表示にもあるとおり、"片道"約10分。途中には何カ所か、小休止のためのベンチまで設置されているくらいだ。何年か前に行ったとき、発着する定期列車は、上下1日各5本


 映像化もされた『クライマーズ・ハイ』という横山秀夫作品でも登場したり、テレビ番組でも何度か紹介されたことで、以前のような"知る人ぞ知る"感や秘境性は、だんだん薄れてきている。


 また季節によって、土休日は臨時列車を運行することもあるようで、最近では周辺にDOAI VILLAGEというグランピング施設がオープンするなど、駅じたいも観光スポットになっているといってもいいくらい、変貌しているようだ。


土合駅下りホームから改札へ向かう階段

 486段もの階段だけで、もちろんエレベータもエスカレータもない、この無人駅(に発着する下り列車)を車椅子利用者が乗降することは、来宮の比じゃないくらい超高難度…というより、残念だけど事実上不可能だろう。


 乗降手伝いの依頼がほんとうにあったとしても、おそらく「拒否」せざるをえないだろうと想像するし、部外者でもそうすべきと思う。


 それでも、「それ、差別です!」「すべき合理的配慮と努力義務の遂行を怠っています!!」と吠えられてしまうのだろうか。


 まさかそんなご利用計画を立ててはいないと祈りたいけど、まだまだ問題を提起し足りないとお考えなのだとしたら…タイヘンだ。

2021.06.09

Photo : Uragoro


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